エンジニア経験を持つ藤井陽平は、マサチューセッツ工科大学への留学中に、スタンフォード大学留学中の弁護士の渡邊弘に出会いました。藤井はソフトウェアエンジニア+経営コンサルティング、渡邊は弁護士+MBAと、お互いに全く異なる経歴でしたが、共に起業に興味を持ち、在学中に世の中に存在する様々な課題について頻繁に議論を重ねていました。
あるとき、藤井は、たまたま渡邊が法的文書を作成している様子を見ていました。
藤井「なんでそんなにスクロールや検索をしてるの?ほとんどの時間をスクロールと検索に割いているじゃない。」
渡邊「法的文書には定義語があって、その意味は文書内の別の箇所のどこかに定義されている。でもそれがどこかは検索しないとわからないんだ。それに他の条項への参照も沢山ある。だからスクロールして参照先を読みに行ってるんだ。」
試しにたった2行の条項を正確に読むのにかかる時間を実際にストップウォッチを使って測定してみると、実に10分以上も費やされていました。しかも、その大部分は別の条項へスクロールや検索の時間でした。
藤井はソフトウェアエンジニア出身で、中学生からプログラミングをしていました。プログラミングをするときは、Visual StudioやVS Code等のプログラミングエディタを利用します。こうした専用エディタはプログラミングの世界でのスクロール・検索の問題をうまく解決していることを知っていた藤井は、渡邊にそれを見せながら説明しました。
藤井「ソフトウェアエンジニアの世界ではそんなスクロールや検索の問題はとっくに解決済みだよ。」
渡邊「すごい、これ、法的文書用に作ろうよ。無駄な作業が一気になくなるぞ。」
BoostDraftのアイデアの素案である「ソフトウェアエンジニア専用のプログラミングエディタのような、法務作業専用の文書エディタ」は、このような異なる業界間の対話から生まれました。
素案が出来上がった後は、更に法的文書審査の課題を挙げていきました。
渡邊がこれまで弁護士として働く間に蓄積した課題意識と、法務知識のない効率化のプロであるソフトウェアエンジニアの藤井が指摘した非効率な点を書き出しました。その数はすぐに100以上になりました。
顧客インタビューを100件以上重ね、抽出した課題の中から、法的文書を扱う者が特に苦痛を感じている項目を評価し抽出しました。
その後は、藤井が初期ソフトウェアを開発し、渡邊が初期の使用者を集めて使ってもらうことで、早い段階でフィードバックを使用者からもらい、何十回も高速で改善を繰り返しました。1年程度たった時点で製品の質が十分に上がり、販売を開始しました。それから2年が経ち、大規模な宣伝活動なしに口コミで、BoostDraftは日本のほぼすべての中規模以上の法律事務所と多数の企業の法務部へ導入されています。
BoostDraftは、最先端技術・高いエンジニアスキルを保持する藤井と、世界各国に専門家の人脈を持ちかつ専門的な文書編集に関して深い知見を持つ渡邊が力を合わせることで、エンジニアで活用されている先端技術を、世界で活躍する専門家の業務に適用していきます。
藤井は渡邊と出会うまでは法律関係のことを一切知りませんでしたし、渡邊はプログラミングに対する知識もありませんでした。藤井と渡邊が出会うことで、課題の解決策が発見できました。
法的文書を作成する際は、スクロール・検索だけでなく、エラーチェック・フォーマットの調整等多数の人力での作業が存在します。我々BoostDraftは、最先端の技術をこうした「人間がやる必要がない課題」に適用し、MS Wordの既存機能をそのままにMS Wordを法務向けに激変させることで、無駄のない全く新しい法的文書審査体験を提供します。