目視チェックに限界を感じながら、解決できる課題だと認識していなかった
ーーまず、法務部の体制や、具体的な業務内容について教えてください。
谷川様:富士フイルムホールディングスの法務部はグループCEO直轄の組織で、部員数は約30名です。取締役会の運営や実効性向上などを中心としたコーポレート分野の業務を担う「コーポレートガバナンスグループ」と、各事業部門への法務支援を担う「ビジネスサポートグループ」の2つのグループで構成されています。
独禁法や取適法といった法令へのコンプライアンス、従業員向けの法務教育などグループ全体で統一した対応が必要な場合には、国内グループ各社の法務担当と連携・支援を行います。また、海外は、米州、欧州、アジアパシフィックの地域統括会社にそれぞれ法務部門があり、グローバルなM&A・PMIプロジェクトでは、我々本社法務部門と海外の法務部門とで協働することも多いです。
米丸様:私と金子、福井は「ビジネスサポートグループ」に所属し、各事業部から依頼される契約審査や法律相談対応が主な役割です。コーポレートガバナンスグループやビジネスサポートグループの一員としての役割に加えて、社員への法務教育、コンプライアンス推進活動、株主総会運営といった全社向けの活動、法務業務の効率化と質向上を目的とする契約書雛形の整備やリーガルテックの導入などの活動も分担し推進しています。
ーーどういった種類の法的文書があり、チェックはどのように行われているのですか?
谷川様:M&Aに関する数十ページに及ぶ長大で複雑な契約書、各事業の開発・製造・販売・ライセンス等に関する契約書の審査、さらには取締役会の議案資料や議事録、株主総会の招集通知や事業報告書といったコーポレート分野の書類まで、幅広く扱っています。
契約書の審査は、通常、マネージャーと担当者の2人1組で行います。担当者が一次審査を行い、その後マネージャーがダブルチェックし、内容を充実させていくという流れです。
福井様:私が担当しているヘルスケア分野の事業では、製薬会社とのCRO(医薬品開発業務受託機関)サービス受託契約や、医療施設との共同研究契約などがあります。特に医療施設との契約では、関連する法令が複数あり、チェックの負荷が高いのが特徴です。
米丸様:当社にはBtoBビジネスだけでなく、写真・カメラや化粧品・サプリメントといったBtoCビジネスもあります。サービスの利用規約などは、一般の消費者が読んで理解できるよう、BtoBビジネスの契約書とはまた違った配慮が必要です。

ーーBoostDraftの導入以前、契約書レビュー業務においてどのような手間や課題を感じていましたか?
金子様:表記揺れの有無、定義語や条項番号の整合性チェック、数字やアルファベットの全角・半角の使い分けといった細かい表記ルールの確認まで、すべて目視で行っていました。株主総会の事業報告を作成する際は、全角/半角などの細かい表記ルールもあり、見落としが起こりがちで苦労していました。
谷川様:M&A案件の契約書は、知財、人事、経理、経営企画など多部門の確認が必要です。多くの部門からコメントが入ると、変更履歴やハイライトが重なり、最終的にそれらを綺麗に統合する作業にも大きな労力がかかっていました。「本当に非生産的で面倒だ」とずっと感じていました。
米丸様:PC画面上での作業のやりにくさもありました。以前は紙にプリントアウトして文書の内容を確認していましたが、コロナ禍を境に在宅勤務が増加し、社内でペーパーレス化も進んだことから、画面上でレビューすることが大幅に増えました。
紙媒体ではページをめくって印を付けながら確認できますが、PC画面での契約書審査は、画面をスクロールして複数のページを行き来しながら定義語や参照条文を確認しなければなりません。長文契約では、別のページに一度移動した後に、元々見ていたページに戻るのに時間を要することも多くありました。
ーーこうした細かい形式面のチェックについて、当時はどのようにとらえていましたか?
谷川様:契約審査においては、必要なステップです。法務のプロフェッショナルである以上、形式を整える作業も「避けては通れない、受け入れるべき試練」だと思っていて、解決できる課題とは認識していませんでした。
福井様:私は当時、入社2年目でした。地道なチェックや転記作業などは、どの先輩方も通ってきた業務です。法務担当として経験すべきことの一部であって、これをこなすことで成長するのだと思っていました。
法務現場を熟知した「形式面の修正に特化する」独自のアプローチが決め手に

ーーBoostDraftを知ったきっかけと、導入の決め手を教えてください。
谷川様:社内のITソリューションビジネス部門から、「法務特化型の面白いツールがある」と紹介を受けたのがきっかけです。
それまでも業務効率化を進める中で、ツールの情報は幅広く収集していました。2023年当時、契約審査の領域では、契約雛形と比較し欠落条項を指摘してくれる等を主な特徴としたツールはあり、デモンストレーションも受けましたが、あまり魅力を感じませんでした。
一方、BoostDraftは、あえて契約書の内容審査の効率化には踏み込まず、形式を整える作業(人がやるべき価値のない作業)を徹底的に排除するというユニークな発想で開発されたツールで、変更履歴の統一や表記揺れの修正といった避けては通れなかった地道な作業を一瞬で処理できる点が目を引きました。現場の苦労を熟知した弁護士が開発したツールで、かゆいところに手が届く、「本当に欲しかったのはこれだ」と思わせてくれる魅力がありました。
米丸様:BoostDraftは、離れているページの参照先もポップアップ機能によって確認しやすく、紙媒体で契約書をチェックするのと同じような動作ができることに惹かれました。
私自身、定義の表記や参照等でミスをしてしまうこともあったため、このツールは絶対に自分たちの業務に必要だと感じて、導入を推進しました。
ーー法務部の仕事は、高い情報セキュリティが求められると思います。導入にあたって社内のハードルはありませんでしたか?
米丸様:実は、セキュリティチェックなどの社内手続きや稟議は、驚くほど早く済みました。AIツールだと外部サーバーに自社のデータをアップロードする必要があるため、非常に多くのセキュリティチェックが必要になりますが、BoostDraftはWordのアドインツールなので、その作業が要らなかったのです。
また、契約書審査のたびにかかっている手間が省かれ、法務として価値を出せる業務に集中できるのであれば十分に費用対効果があると判断されたため、社内稟議での苦労もありませんでした。
谷川様:クラウドサービスだと、そのサービスの仕様に合わせて業務フローを変えざるを得ないことも多いです。ところが、BoostDraftなら今の業務フローを変えることなく、Word上で直感的に使えるので、導入への心理的・実務的ハードルも低く助かりました。
ーー正式な導入前に、トライアルを実施いただきました。その際の部内の反応はいかがでしたか?
米丸様:実際に触ってみると、操作がシンプルでとてもわかりやすいと感じました。すぐに「もう元の業務のやり方には戻れない」と感じるほど、その利便性に惹き込まれたことを覚えています。
トライアルは、部内の全員が参加しました。メンバーからのフィードバックは、ほぼ100%がポジティブな内容だったので、迷わず本導入を決めましたね。
福井様:トライアルで使ってみて、私も「ぜひ導入してほしい」と思いました。表記揺れや整合性のチェックなどの作業に時間を割くよりも、法令の検討など、本来の法務業務に時間を充てたほうが自分自身の成長につながるのではないかと、認識が変わりました。
ーー現在は、どのようにBoostDraftを活用していますか?
谷川様:導入当初は部門の約半数、評判が良かったので徐々にIDを増やし、今ではほぼ全員が利用しています。部内で使い方のルールを設けているわけではなく、一人ひとりが自分の好みの機能を自由に活用し業務を効率化しています。直感的にわかりやすく、日々の業務にすっと入って使いこなせる。それが、このツールのいいところだと思います。
レビュー時間約3分の1減、修正漏れも激減。高付加価値業務に集中できる環境へ

ーー具体的にどのような効果を実感されましたか?
米丸様:体感として、3時間かかっていた長文の契約書レビューが2時間程度に、1時間の通常契約のチェックが45分程度で済んでいます。約3分の1の時間を短縮できるようになりました。
また、紙と同じような感覚で画面上でスムーズにレビューができるようになり、業務の質を保ちながらペーパーレス化やリモートワークの推進にも寄与しています。
福井様:作業負担が減ったことで、そのぶんの時間を法令検討などの、より法的専門性が求められる付加価値の高い業務に充てられるようになりました。
ーー使ってみて良かった機能を教えてください。
米丸様:まず、ポップアップ機能が役立っています。引用先をページを移動せず確認できるので、画面を何度も上下にスクロールする手間がなくなり、確認漏れが防げるようになりました。
谷川様:M&Aの契約書は定義語やリファレンスが多く、ページ数も膨大なので、ポップアップ機能があることでとても助かっています。
M&A契約では、定義規定を冒頭にまとめて記載するのが一般的です。そのため、例えば契約書の38ページ目を読んでいて定義語が出てきたら、冒頭まで戻って確認する必要がありました。M&Aの契約書はページ数が膨大なため、Wordでスクロールを繰り返すうちに元々どこを読んでいたのかわからなくなってしまうこともあり、大きなストレスになっていました。ポップアップ機能で、契約書の様々な場所で登場する定義語の意味を即座に確認できるようになり、スクロールの手間が解消されたのは大きな変化です。
金子様:引用する法令のサイトも、ポップアップで表示されるのがいいですね。以前は、法令の引用が出てくるたびに毎回Web検索をしていました。ブラウザを立ち上げて、検索キーワードを入れ、該当の条項を見つけるためにスクロールしていると、結構な時間がかかるのです。今では大きく業務効率化できていますし、ミスも防げています。
先日、BoostDraftのおかげで見落としを防げたことがありました。「取適法(中小受託取引適正化法)」関連のドキュメントの中に、以前の法令名である「下請法」という表記が残ってしまっていたのです。BoostDraftのポップアップ機能で「法令情報を取得できませんでした」とエラーが表示されたことで、修正漏れに気付くことができました。

(ポップアップ機能参考画像:契約書のテキストはダミーです)
また、BoostDraftは、条項を追加したり削除したりすることによる番号のズレも指摘してくれます。「前項」や「各項」というキーワードもハイライトされるので、条文の構成を把握しやすくなりました。
福井様:私が便利だと感じるのは、定義語ハイライトです。英文契約では大文字・小文字の使い分けが、定義語を意味するかどうかに関わります。定義語が自動でハイライト表示されることで、確認漏れを防ぐことに繋がっています。
米丸様:2つの画面を開いて、同時に修正できるのも助かっています。複数の契約書を修正しながら調整しなければいけないとき、欠かせない機能です。
ーーBoostDraftは、皆さまにとってどのような存在ですか?
米丸様:法務部の誰もが、業務をするうえで欠かせないツールになっています。契約更新のタイミングが近づいた際、BoostDraftの継続を希望するかを部内で聞いてみたところ、皆が「これからも使いたい」との意見だったので、契約を更新しました。
谷川様:BoostDraftが提供している機能は、形式面の無駄を極限まで効率化するという非常にシンプルなものです。単純だからこそ、その価値は生成AIが普及しても損なわれないと思います。
米丸様:BoostDraftを導入してからの3年間で、機能がどんどん追加されていることを感じます。新しく開発された機能も、使い方をキャッチアップしていきたいです。
法務の現場に寄り添うツールの活用範囲を広げていきたい

ーー今後の展望について教えてください。
米丸様:現在はホールディングスの法務部とグループ会社1社で導入していますが、今後は他部門や海外拠点などにも展開し、契約書以外の書類でも活用できると、グループ全体の業務効率化につながると思います。
谷川様:全社的にも、デジタルツールを使って生産性を向上させる方針を掲げているところです。法務の現場の「かゆいところ」をよく理解しているBoostDraftだからこそ創れる、法律家に寄り添った機能のさらなる進化に期待しています。
ーー最後に、これからBoostDraftの導入を検討されている方へメッセージをお願いします。
金子様:BoostDraftを使っていて実感するのは、特別なスキルは何も要らない、汎用的かつ普遍的なツールだということです。ベテラン・新人誰にとっても、業務のプラスになる存在だと思います。
福井様:法務の仕事の本質は、高品質なアウトプットを出すことです。BoostDraftは、手作業に使っていた時間を効率化し、法務として価値を出すための時間を割けるようにしてくれます。より良い法務業務をするために、大きく役立つサービスだと感じています。