少数精鋭の法務が抱えていた形式チェックの負荷と潜在リスク
ーーまず、貴社の事業概要と、法務組織の位置づけについて教えてください。
出橋様:当社は、もともとディーゼルエンジンから事業を開始しており、このエンジンの技術をコアに、農業機械、建設機械、エネルギーシステム、小型エンジン、大型エンジン、マリン、コンポーネントの7領域で研究開発・製造・販売・アフターサービスを行っています。昨今はそれ以外にも、社会課題の解決を目指した新たなソリューションや新規事業にも取り組んでいます。
国内グループ会社が当事者となる契約審査や法務相談は、海外取引先を相手とする案件も含め、私どものCSR部 法務コンプライアンスグループにてほぼ一元的に対応しています。
ーー業務内容を具体的に教えていただけますか。
桒内様:業務内容としては大きく4つです。 まず1つ目がグループ全体のリーガルリスクをマネジメントする統括的な管理業務。2つ目が、不正事案が発生した際の初期調査や調査委員会の事務局運営、再発防止策の策定といった緊急対応。3つ目が、契約審査・法務相談・紛争事案の対応・新規事業に対する法的な助言を行う支援業務。そして最後に、グループ全体に対するコンプライアンスの啓蒙として、委員会や法務監査を実施するコンプライアンス活動です。
出橋様:近年は、新規事業の支援や事業部への伴走型サポートという役割も増してきていて、従来のように書面だけを見て対応できる業務は減ってきています。新たなプロジェクトが動くと、業務提携や出資の話にもなりますし、事業会社とのコミュニケーションにも相当な工数が必要になっています。
ーーBoostDraftを導入する前、契約書のレビューや作成はどのように対応されていましたか。当時の課題についてもお聞かせください。
桒内様:契約書の類型としては、NDAや業務委託、開発関連、販売店・代理店など当社ひな形をベースとしたもののほか、相手方ひな形の検討や覚書、組織再編・M&A関連の対応支援など多岐にわたります。事業領域の幅が広い分、関連する法律も広範です。メンバーそれぞれの専門性を活かす形で、基本的には一次レビュー・二次レビューと担当が割り振られ、ダブルチェックする体制でレビューを行っています。一人あたり1日平均で新規案件3〜5件に対応していました。
そんな中で、契約書の表記ゆれ・半角全角の統一・定義語の抜け漏れといった形式面のチェックは「重要だとわかっていながらも、優先順位を下げざるを得ない」状況でした。
形式面も本来はきちんと見なければいけないという認識は全員が持っていながらも、純粋に法的な論点・リスクについてレビューするだけで手一杯になり、手が回らない。特に審査の件数が多い繁忙期では、依頼元の部門に形式面の確認をお願いせざるを得ないケースもあり、結果として、相手方とのやり取りのなかで不備を修正していただく形で戻ってくることもありました。
出橋様:マネジメントの立場としても、手は打たないといけないと感じていました。形式面でのミスが具体的なトラブルに直結した事例こそないものの、潜在リスクは「馬鹿にできないもの」と考えています。
形式的な話のように見えても、実質的なリスクに直結しかねないようなヒヤリハットは起こりえます。実際に、ある契約で金額算定の計算式で使われている用語の定義がどこにもなかった、ということを社内のダブルチェックで気づき未然にトラブルを防げたことがあります。そのときは人間の目で発見して事前に修正できていましたが、余裕がないときに見落としていたら大変なことになっていたでしょう。「常に一定のレベルでチェックができているか」「漏れはないか」、そういったプレッシャーや不安は常にありました。
加えて、メンバーがそういったやりきれなさや不満を抱えながら仕事をしているという状況自体も大きな問題です。体裁の細かい話にとどまらない、組織として向き合わなければならない大きな課題だと捉えていました。
トライアルで確かな効果を実感。形式面を支えるBoostDraftを導入

ーーそのような中、BoostDraftはどのようなきっかけで検討を始めたのでしょうか。
桒内様:実は、私が前職でBoostDraftを利用していたのがきっかけです。
前職では、誤字脱字や体裁面での指摘をめぐるコミュニケーションがフラストレーションになることも多々ありました。BoostDraftが形式面を指摘し自動的に修正してくれるおかげで、そうしたやり取りがなくなり、心理的安全性も向上しました。
ーー現職でも「BoostDraftを使いたい」と思われたきっかけは何だったのでしょうか。
桒内様:現職でも、長文かつ特定の専門用語が頻繁に出てくる文書を事業会社と一緒に作り上げていく必要がありました。
用語の追加や削除を何度も繰り返すような状況で、その都度、定義の抜け漏れ確認や、条文自体の追加・削除に伴う参照条文変更が発生していました。この繰り返しの中で「機械的に形式面を修正できたら、どんなに楽だろうか」と思い、前職での経験を話したのが始まりです。
出橋様:話を聞いて良さそうだと思いましたが、本導入をする前に実際にどれぐらい削減できるかを確認したかったので、まずはトライアルをさせていただきました。
ーートライアルではどのような点を気にされていましたか?
出橋様:判断軸は主に2つありました。1つは「業務効率化」に本当につながるのか。そしてもう1つは、先ほど話に出たような「定義の抜け漏れ」といった、見落とすと致命的になる問題をきちんと抑えられるか、という点です。
メンバーの反応や感触を知りたかったので、全員に使ってもらい、その反応を基準に判断しようと考えていました。結果として、メンバーみんなが非常に良い反応を示してくれました。
桒内様:トライアルでは、これまで「ちゃんとしているだろう」という前提で使っていた自社のひな形に実はエラーが潜んでいたことに気づけたり、相手方から提示された契約書にも意外と多くの指摘事項が出たりと、具体的な発見がありました。
ーー最終的な導入の決め手は何でしたか?
出橋様:トライアルで具体的な効果を確認できたことに加え、コストがかなり抑えられていることと、使用方法が難しくなく誰でもすぐに使い始められることがポイントでした。
また、セキュリティ面も大きな決め手となりました。クラウドサービスではなくWordのアドイン形式で導入できる点がセキュリティ面で安心だ、という評価がIT部門からありました。セキュリティ部門への説明用資料も事前に提供いただけたので、非常にスムーズに社内手続きを進めることができました。
実はBoostDraftの検討と同時期に、案件管理やナレッジの蓄積を目的とした別のシステムの導入を進めていました。BoostDraftがそのシステムではフォローできない領域をカバーできるかという点もトライアルで確認していましたが、結果として両者の役割が被らず、それぞれで効果を発揮できると判断し、最終的にBoostDraftも導入を決めました。
ーーその際、生成AIを活用した契約書レビューなどは検討されましたか?
出橋様:業務効率化の目的で、AIで契約書の中身をレビューするサービスも検討はしていました。ただ、社内では「契約書の中身までAIに任せるべきなのか」という観点から議論がありました。AIが判断して出してきたものに対して、結局は人間が判断する必要がある。そうすると、我々としては読む文書が増えてしまうばかりになってしまうのではないか、結果として業務の効率化に繋がらないのではないか、という懸念がありました。
最終的には、比較対象を出してくれたり情報を整理してくれたりしながら、最後の判断は人間が行う、といったツールのほうが業務フローとして合っていると判断し、さきほどの案件管理のシステムと、BoostDraftを選びました。
BoostDraftは、内容面には踏み込まず、形式面をサポートすることで「人間がより本質的な判断に集中できる環境をつくる」という設計で、私たちの考え方とも一致していました。
ーー今後のAI活用についてはどのようにお考えでしょうか。
出橋様:AIをめぐる環境は本当に変化が速く、半年前と今とではまったく状況が違いますよね。だからこそ、特定の使い方に固定して考えるのではなく、世の中の動きや技術の進化をきちんと追い続けることが大事だと思っています。新しい技術が出てきたときに、「これは自分たちの業務にどう活かせるのか」「どの場面で役立ちそうか」を考えられる状態でいたいと考えています。
チームとしても、新しいものに対して前向きに挑戦しやすい雰囲気があります。AIについても今後ますます重要なテーマとして、積極的に向き合っていきたいと考えています。
形式チェックの自動化で品質と効率を改善
ーー実際にBoostDraftを導入したことで、どのような効果を実感されましたか?
出橋様:一番大きな点としては、形式的なエラーがほぼゼロになったことです。これまでは「人間のダブルチェック」という、プレッシャーのかかるアナログな方法で品質を維持するしかありませんでしたが、その役割をBoostDraftが担い、自動でチェック・修正を行ってくれるようになりました。結果として、一次・二次のレビューを通じて、体裁に関する指摘や差し戻しはほとんどありません。
細かい体裁を気にする必要がなくなった安心感は想像以上に大きいと感じています。こうした確認作業にリソースを割く必要がなくなったことで、組織として「より本質的なリスクの検討」や事業会社とのコミュニケーションに注力できるようになり、契約審査のクオリティ自体の底上げに繋がっています。
法令の条文参照についても、以前は別途ブラウザを立ち上げてe-Govを開く手間がありましたが、今はWord上で法令を入力するだけで瞬時に細かい条文まで確認できるようになりました。契約書と直接関係のない法令名でも手軽に確認できるなど、まさに「かゆいところに手が届く」感覚で重宝しています。
桒内様:実務担当者としては、その恩恵を時間的な削減効果としても実感しています。以前であれば、「定義の抜け漏れがないか」とプレッシャーを感じながら条文を一つひとつ確認したり、文書内を探し回ったりしていた非効率な時間がなくなりました。これを考慮すると、1工程当たり約10%程度、時間削減ができていると捉えています。
ーーその他に使ってみて良かった機能を教えてください。
桒内様:BoostDraft Compareの文書比較の機能がとても気に入っています。画像PDFであっても、OCRでテキストを認識して比較できる点が秀逸ですね。契約更新の対応時など、前回締結した契約書が画像PDFとして残っているケースがあります。以前は新旧の差分を把握するために多大な時間をかけて目視確認を行う必要がありましたが、そうした画像PDFでも機械的に一瞬で突合して差異を確認できるため、本当に助かっています。
また、一番好きな機能を挙げるとしたら、表記ゆれを一括修正できる機能です。単に機械的な全置換が行われるのではなく、「ここは修正しない」「この表記で残す」といった個別の選択が可能なため、自分の判断を介在させながらストレスなく大幅な時短を実現できています。
出橋様:定義語の定義内容がポップアップで表示される機能は非常に気に入っています。以前はWordの画面を二分割にして定義条項と本文を別々に表示させ確認したり、定義条項のページのみを印刷して手元に置いたりと、苦肉の策を講じていました。そうした非効率な作業から完全に解放されたのは嬉しいですね。
ーーチーム内で広く活用されていますが、導入から定着にあたっては、どのような工夫をされましたか?
出橋様:新しいツールを導入する際、単にその利便性を伝えるだけではなかなか現場に使ってもらえません。今回は桒内が主導して、ミーティングで説明の時間を設けたり、実際に触ってみる機会を用意したりと、初期の段階からメンバーを巻き込んでくれたことが、スムーズな立ち上げとその後の浸透につながったと感じています。
桒内様:自社内の動きだけでなく、BoostDraftの担当の方にオンラインの説明動画や導入時のフォローをしっかりしていただいたのも非常にありがたかったです。そこで得たノウハウを社内に展開したり、課のミーティングで使用感を共有する時間を設け、その場でメンバーの意見や疑問を汲み取りながら進められた点も、スムーズな定着に寄与したと考えています。
「やることのリスク」よりも「やらないことのリスク」を考える。まず使ってみることが重要

ーー今後、BoostDraftに期待することがあれば教えてください。
桒内様:特に期待しているのは、ツールバーの表示位置の改善です。以前は画面上部に横向きで表示されていましたが、現在は左側に縦向きで表示されるため、私を含め使いづらさを感じているメンバーがいます。
契約書のレビュー時は、画面中央の文書を確認しながら、必要に応じてWordの上部ツールバーを操作することが多く、視線の動きは主に上下方向です。一方で、BoostDraftのツールバーが左側にあると、視線を動かす範囲が上下左右に広がり、確認作業の負担が増えた印象があります。
直近のアップデートでツールバーを縦表示のまま動かせるようにはなりましたが、Wordの上部ツールバーの直下で閲覧・操作できるのと、縦のツールバーを開いて操作するのとでは、視認性・操作性が大きく異なるように感じられます。使いやすさには個人差があるものの、視線の動きが少ないほどスムーズに作業できるため、個人の好みやワークスペースの状況に応じてツールバーの配置を柔軟に設定できるよう、引き続き改善を期待しています。
ーーその他に、今後あると嬉しい機能やサポートはありますか?
桒内様:Wordだけでなく、ExcelやPowerPointでもBoostDraftの形式面をサポートする機能が使えるようになるとさらに便利だと感じています。他にも、案件管理システムのクラウド上で契約書を開いた際に、BoostDraftを使えるようになると嬉しいですね。そのシステム上で案件管理やナレッジ蓄積を行いながら、BoostDraftで文書確認や校正もシームレスに進められるようになれば、業務全体の効率化につながると思います。
サポートとしては、他社でどのようにBoostDraftを活用しているのか、といった事例を共有いただけるとありがたいです。自分たちがまだ使えていない便利な機能や、より効果的な使い方に気づくきっかけになると思います。
ーー最後に、これからBoostDraftの導入を検討されている方へメッセージをお願いします。
桒内様:契約審査には、法的な論点を検討する側面だけでなく、「文書としての正確さを追求する」という作業的な側面も多分にあります。その手間のかかる作業をツールに任せられることで、想像以上の工数削減を実感できるはずです。
また、形式面での指摘や差し戻しに関するコミュニケーションで、精神的な負担やフラストレーションを感じることがあれば、BoostDraftは非常に有効です。「ツールが指摘しているから」という客観的な根拠を示すことで、感情的にならずにスムーズなやり取りができるようになるのも大きなメリットです。
出橋様:何でもそうかもしれませんが、「まず使ってみる」という姿勢がないと何も進歩しないと考えています。一昔前は「ツールに頼るべきではない」という風潮があったかもしれませんが、今やデジタル技術やAIを活用して業務を効率化するのは当然の時代です。
「このツールはどこまでできるのか」「機械が見て本当に漏れはないのか」などと議論している間に、とにかく着手して効果を実感している他社に、どんどん遅れを取ってしまうかもしれません。「やることのリスク」よりも「やらないことのリスク」を考えて、とにかく試してみることが大事ではないでしょうか。BoostDraftはWordのアドイン形式で導入できますし、コストも大きな投資を必要とするものではありません。
ツールの力を借りることで法務が本来注力すべき、事業への伴走や高度な法的判断、といった領域に時間を使えるようになります。BoostDraftはその第一歩として、非常に取り組みやすい選択肢だと感じています。