グループ全体の法務を支える中、形式的な作業により積み重なっていた負荷

――まず、法務グループの位置づけについて教えてください。
廣瀨様:法務グループでは、ホールディングス内のグループ各社の法務業務を全般的に担当しており、契約法務を中心に法務相談やトラブル対応、さらに機関運営やコンプライアンス対応まで幅広くカバーしています。
――具体的な契約書の種類や量について教えてください。
廣瀨様:契約書の種類で最も多いのは取引基本契約やNDA(秘密保持契約)ですが、特に土木建築機材事業や素形材事業では主力製品の改良研究などに伴う共同研究契約、その他知財関連契約もあります。そうした契約は難易度が格段に高く、内容を誤ると自社の権利に大きく影響してしまうリスクがあるため、ホールディングス本体の技術部門と連携しながら慎重に対応しています。また、海外展開をしている製品については、英文での契約も発生します。
時期による繁閑はありますが、月に均すと約30件、年間で約360件の案件対応をしていて、業務全体で契約書レビューが占める割合は、時期によって3割から5割ほどです。とはいえ、契約対応が少ないタイミングでは他の業務に注力するという形になりますので、いずれにしても手が空く時間はほとんどなく、絶え間なく業務に追われている状態です。
――契約関連以外ではどのような業務がありますか。
廣瀨様:法改正への対応や規程整備も法務グループの重要な役割の一つです。グループ全体の統制や方針に関わる規程を作成し、それをグループ各社に展開する際のサポートも行っています。
最近は法改正も多く、総務・人事労務部署を中心に規程見直しの相談をいただくことも増えています。また、人権、CSR、サステナビリティ関連規程の新設に関する検討をしたりと新しい取り組みも進めており、業務の幅はどんどん広がっています。日々、各事業会社から多様な相談が絶え間なく寄せられるような状況でした。
――こういった業務のどのような点に課題やお悩みを感じていましたか。
廣瀨様:BoostDraft導入前は、チェック業務のすべてを人の目と手作業に頼っていました。形式面も内容面も、すべて自分の目でチェックしていたんです。時間がかかるのはもちろん、心理的な負荷も非常に大きかったです。
表記ゆれや、条項を追加した際の参照条文のずれには、常に神経を使っていました。中には数十ページに及ぶ契約書で条項番号の参照がずれていないか何度もスクロールして確認したり、最終チェックのためにわざわざ印刷して赤ペン片手に読み込んだりしていました。Wordの検索機能で「及び」と「および」をそれぞれ検索し、契約書ドラフト内での出現回数を数えて多い方(最頻値)に揃えて自社の修正文案を作成する、という地道な作業も日常茶飯事でした。
修正履歴の統合作業は、想像以上に手間がかかり、心理面でも大きな負担になっていました。事業部や関連部署を巻き込んでレビューを重ねると、Wordファイルは赤・青・緑と色分けされた複数名の修正履歴やコメントで埋め尽くされます。例えば、誰のコメントを社の見解として残し、どの修正を反映するかを一つひとつ整理する必要がありました。その上で、最終的に相手方へ提示するために、きれいなドラフトを開き直し、一から当社側の見解として修正者名をすべて統一したバージョンの修正ドラフトを作成していました。こうした手作業に、多くの時間を割かれていました。
「現場が楽になるなら良い」とスムーズに導入決定

――BoostDraftを知ったきっかけ、導入の経緯を教えてください。
廣瀨様:導入の直接的なきっかけは、私が前職でもBoostDraftを利用していたことでした。そのころから「BoostDraftなしでは法務の仕事はできない」と思うほど便利に感じていたため、当社でも導入をしたいと考えました。
当時の弊社法務グループではツール等は一切導入しておらず、法務部門がドラフトを目視チェックするという運用でした。その意味でいわゆる「リーガルテック」は当時社内でなじみがなかったかもしれません。そうした環境の中で、最初に導入したリーガルテックがBoostDraftでした。
――社内の稟議や導入手続きはスムーズに進みましたか。
廣瀨様:部長がBoostDraftの有用性やコスト面をすぐに理解し、「現場が楽になるなら良い」と後押ししてくださったこともあり、稟議は驚くほどスムーズに進みました。
ただ、「会社としてツール導入が定着するか分からないため、まずは月契約で」という条件で、スモールスタートとなりました。そこから1年間は月契約で利用し、十分に効果を実感した上で年間契約に切り替えました。その際は、法務の人員を増やそうにも予算も人材も限られている中で、いかに業務品質と生産性を担保できるか、BoostDraftの費用対効果を社内で強くプッシュしました。
セキュリティ面でも、BoostDraftはWordアドイン形式のため外部へのデータ送信がなく、社内のセキュリティ審査も問題なく通りました。これは導入のしやすさという点で大きな利点だと思いました。
形式チェック時間が3分の1に。心理的負担も大幅に解消

――BoostDraftの導入前と比べて、業務品質や時間的な面でどのような変化がありましたか。
廣瀨様:定性面では、心理的な負荷が圧倒的に減りました。「見落としたらどうしよう」というプレッシャーから解放されたのが一番大きいです。赤いハイライトが出ていれば何か間違っている、ということが一目瞭然です。それまで目を皿のようにして確認していたことと比べると、安心感がまるで違います。
定量面で言えば、紙に印刷して行っていた最終的な形式チェックが、最長30分かかっていたものが5〜10分程度へと、約3分の1に圧縮されました。必ずしも本質的な業務とはいえないような作業から解放された効果は非常に大きいと感じています。
業務品質の面でも助かっています。直近で入社したメンバーも、BoostDraftがあるおかげで、早い段階から形式面の品質を安定して担保できています。神経をすり減らす形式チェックを意識せずに済む分、教育コストの削減やチーム全体の生産性向上にもつながっています。
――特に価値を感じている機能や、日常的に重宝している機能を教えてください。
廣瀨様:一番気に入っているのは、やはり修正履歴の統合機能です。この機能だけでも十分に導入する価値があると感じています。先日も、事業部、技術部門、そして私の3者からの修正コメントが入り乱れた契約書があったのですが、ボタン一つで自社の修正として統合し、体裁を整えて相手方に送ることができました。あの作業を手でやっていたら、おそらく30分は余計にかかっていたでしょうし、精神的な消耗も激しかったはずです。
ほかにも、日常的に頼っている機能は数多くあります。アウトライン機能は、文書の全体構造を把握したり、スクラッチで契約書を作成したりするときに重宝しています。
法令参照機能も、条文番号のファクトチェックとして非常に使い勝手が良いです。例えば、記憶を頼りに「商法526条」(※商法526条:買主による目的物の検査及び通知)などと入力しても、その場で正しい条文かどうかを確認できますし、法令名が誤っていればエラーが表示されるため、法改正に伴う名称変更への対応漏れも防げます。
相互参照のチェック機能や、カギ括弧の抜け漏れ・フォントの不一致といった細かな不備まで検知してくれるプルーフリード機能にも助けられています。最近はBoostDraft内の検索機能が便利で、もうWordの標準検索機能は使わなくなりました。
契約書に限らず規程や対外的な文書、レターなども含め、法務がWordで開いて作成・編集するものであれば基本的にBoostDraftをオンにして作業しています。今となっては文書業務においてBoostDraftがあることが当たり前になっています。
新旧対照表の素案作成が1時間から5分に。Compareが広げた活用領域
――2026年にBoostDraft Compareも追加導入されていますが、その背景や導入の決め手を教えてください。
廣瀨様:規程関連業務にも本格的に取り組んでいくという総務部の方針が直接のきっかけです。
これまでの規程改定では、新旧対照表を作る際、Wordの表機能と格闘しながら、変更点を一つひとつ手作業でコピペして下線を引くという、本当に骨の折れる作業をしていました。
以前にトライアルでCompareを試したことがあり、この新旧対照表の作成が自動でできることに感動していたので、規程整備を本格化するなら「これがないと仕事にならない」と判断し、追加導入を決断しました。
――Compare導入で、規程改定の業務にどのような効果がありましたか。
廣瀨様:規程改定時の新旧対照表作成が劇的に効率化されました。改定部分の量にもよりますが、以前は新旧対照表を作成するだけで1件あたり1時間以上かかっていたのに対し、いまは5分もかからず素案として生成されます。単純作業から解放されるだけでも、導入した価値は十分にありました。
実際に、法務部門で電子契約サービスを導入した際に文書管理規程を改定する必要があったのですが、その場面でもCompareが活躍しました。備考欄まで含めた新旧対照表が数分で生成されるため、形式的な作業ではなく、規程の中身そのものや決裁者が判断しやすい資料作りに向けた検討など、一歩進んだ部分に集中することができました。
改定の対象となる規程は件数も多く、新旧対照表を作るたびに、Compareの価値を実感しています。
――Compareは契約書レビューではどのように活用されていますか。
廣瀨様:当初想定していなかったことではあるのですが、いまでは契約書レビューでも重要な役割を担っています。
例えば、あるお取引先との契約交渉において、条件が固まった段階で、先方から最終版として修正履歴のないWordファイルが送られてきました。これだけであれば、契約交渉上はよくある実務フローかと思います。ただ、製本作業に進む前に念のため1つ前の版のドラフトとCompareで比較したところ、知的財産権の帰属に関わる条文に変更が加えられていることが判明しました。修正履歴だけを頼りにしていたら気づけないまま締結していた可能性もあり、Compareを導入して良かったと心から実感した出来事です。
ほかにも、修正履歴がないWordファイル等で契約書ドラフトをやり取りされるケースや、PDFのみでドラフトを送付されるお取引先との対応においても、Compareの比較機能が重宝しています。修正履歴が残っていなくとも変更点を瞬時に確認できますし、PDFで送られてきた場合でも、WordとPDFで比較することができるため、簡単に変更点を把握することができ、差分の検証に非常に助かっています。
BoostDraftは企業法務の「水」。KXと法務DXを足元から支える不可欠な存在

――昨今、生成AIを使用したサービスが広がる中で、BoostDraftの役割や使い分けについてどのようにお考えですか。
廣瀨様:BoostDraftはあくまで「契約書作成エディタ」だと考えています。Wordに当然あるべき機能という位置づけで、これがないと仕事にならないレベルです。一方でAIは、現時点では良き「壁打ち相手」として使っています。たたき台を作成してもらったり、レビュー方針の確認など、一から考える自分の思考時間の節約に活用したりしています。内容のチェックは人間が本質的に関わるべき部分なので、AIにはヒントをもらい、BoostDraftで生み出した時間を使って人間がより良い提案を考える、という使い分けです。
最近、BoostDraftとは別に、事業部も使えるAIレビューツールを弊社全グループ向けに導入しました。これにより、定型的な契約は事業部や各グループ会社で一次レビューを完結してもらい、法務はより難易度の高い案件やその他戦略的な領域(M&Aなど)に注力する体制を目指しています。事業部がAIレビューツールでセルフチェックすることで、そもそも「法務チェック待ち」というリードタイムを削減できますし、法務に上がってくる案件の質も向上します。そして私たちは、BoostDraftで確保した時間を使って、その高度な相談に集中できます。BoostDraftは、こうした理想的な分業体制を築くための、時間的・精神的な余力を生み出してくれる不可欠なツールです。
――AIレビューの全社導入をリードするなど、法務が主体的にDXを推進されている印象を受けます。その中で、BoostDraftはどのような位置づけにありますか。
廣瀨様:弊社は「KX(カワキン・トランスフォーメーション)」を掲げ、全社的に事業のあり方を変革していこうとしています。その中で、こうしたツールを導入することで、法務もDX推進への取り組み、ひいてはKXに貢献していると自信を持って示せています。
実際に、他部署との打ち合わせでBoostDraftの画面を共有しながらリアルタイムで修正等の作業をしていたところ、「便利そうなツールですね」と関心を持っていただくこともありました。
――今後、BoostDraftに期待することがあれば教えてください。
廣瀨様:現状でも非常に満足していますが、あえて言うならば、BoostDraft Compareの新旧対照表を自動生成する機能について、出力する項目や並び順をユーザー側でカスタマイズできるようになると、もっと便利になり、もっと使い倒せると思います。
――同じような環境で法務業務に取り組んでいる方へ、BoostDraftをどのような点でおすすめできるか教えてください。
廣瀨様:これからリーガルテックを導入したい、法務DXを進めたいと考えている企業にとって、最初に入れるべきツールとしておすすめします。
理由は3つあります。1つ目は、コストパフォーマンスが非常に高いこと。2つ目は、Wordアドインなので非常にセキュリティが高く、導入ハードルが低いこと。そして3つ目は、修正履歴の統合機能の圧倒的な利便性です。UIの分かりやすさも含め、手作業で修正履歴を整理している方が見たら、きっと感動するはずです。
BoostDraftは「かゆいところに手が届く」ツールで、私にとってはもはや「水」のような存在です。企業法務として契約書や規程文書を作成・レビューする上で、必要不可欠――なくてはならない存在です。もし、かつての私のように、複数部署や相手方の修正コメントが入り乱れてカラフルになったWordファイルを開いて毎度悲しい思いをしている方がいるなら、ぜひ一度試してみていただきたいと思います。「世界が変わりますよ」と伝えたいですね。